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2006年5月12日 (金)

豊かさの代償

古くからの仕事仲間である建築家のSさんからいただいた"消えゆく同潤会アパートメント"(河出書房新社)を読んでいて、心に沁みる一文に出くわしました。
「懐かしい時代は高度成長期を境にして遠くへ行ってしまった。豊かさを手に入れるために必死で働いているうちに、指の間からこぼれ落ちていってしまったいろいろなものを、もう取り戻すことはできないのだろうか」
Sさんの師匠にあたる建築家で、同潤会江戸川アパートメントで生まれ育った橋本文隆氏の文章です。豊かさと幸福は同義語ではありません。かつてビルマの高僧が「人間は、すこし貧しいほうが幸せになれるのです」といった意味のことを語っているのを、新聞のコラムで読んだ記憶があります。橋本氏が"指の間からこぼれ落ちていってしまったいろいろなもの"と表現したのは、豊かさが大衆化する以前の近代市民社会だけがつくり出すことができた、相互扶助の精神や市民としての義務感といったものに支えられたコミュニティ、そこに属しているという安心感、幸福感だったのではないでしょうか。
豊かさを求めて際限なく肥大し続ける欲望は、今日もそんな時代の名残を呑み込んでは、原子のようにバラバラになった人々のために、見かけだけはこぎれいな建物を吐き出していく - 工事現場を見かけるたびに、ふとそんな感慨に囚われてしまいます。
(サムネイルをクリックすると拡大画像をご覧いただけます)

Imgp0389
ISO400、1/60、f11.0、露出補正0.00、24mm
(新宿区若葉町2丁目)





Imgp1057
ISO400、1/60、f11.0、露出補正-0.70、24mm
(新宿区北新宿3丁目)





Imgp2977
ISO400、1/250、f8.0、露出補正0.00、29mm
(中野区中野5丁目)

Imgp3004
ISO400、1/125、f10.0、露出補正-1.00、24mm
(中野区中野5丁目)






[2006年5月11日の散歩]

お休み

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